Audit Plus 高橋公認会計士事務所

2024/4/7

中小企業の売り上げアップ!会計士が教える3つの実践的ノウハウ – ③ガバナンス体制の整備

METIが策定したガイドライン「収益力改善支援に関する実務指針」のなかで、中小企業が売り上げアップを目指す際に参考にできるものの紹介、最終回です。
経営者がガバナンス体制の整備に取り組む目的は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためです。こうした成長と企業価値の向上を実現するためには、経営者が金融機関を含めた取引先等との良好な信頼関係を構築することが極めて重要です。
こうした信頼関係の構築では、取引先等への情報開示等による経営の透明性確保が必要であり、事業者として最低限整備すべき項目です。その際、情報開示等の内容の適時性・適切性や正確性も重要であることから、これらを踏まえて経営者はガバナンス体制を検討する必要があります。

現状把握

具体的な計画策定にあたり、支援者は取引先等への情報開示等による経営の透明性確保、情報開示等の内容の正確性、事業者と経営者の資産等の分別管理、内部管理体制の構築や収益力改善による財務基盤の強化など定性的・定量的な情報の両面について、社内ステークホルダーから説明を受け、各種財務諸表等の資料を確認します。
株主構成や役員構成、経営者年齢や経営理念といった基本情報等を確認・整理することで、経営体制の特色や問題点、事業継続に向けた課題等を検討します。
《主な項目と着眼点》
○経営者年齢:事業承継や後継者の育成等は進んでいるか等(特に高齢の場合)
○経営理念 :計画の方向性やコンセプトを決めていく上での指針 等
○経営体制 :各部門のキーパーソン等を整理し、計画実行に必要なアプローチを検討 等

この際、経営者が思い描く「ありたい姿」や「将来像」を再確認し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指せるよう、事業規模に見合った組織体制面の整備や財務基盤の強化に取り組むことが重要です。
具体的には、次のような着眼点に基づき、分析を行います。

経営の透明性確保

取引金融機関等への情報開示や経営者とのコミュニケーション

事業者が作成している決算書や各勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)、確定申告等の税務関係書類、試算表、資金繰り表等といった資料の種類や作成頻度を確認する。情報開示が適時適切に行われているかを、報告頻度、報告先、報告内容等で確認し、経営の透明性確保に係る課題点を抽出していく。この際、必要なタイミング又は定期的に経営状況等が経営者から確認できるなど、経営者と支援者とのコミュニケーションに支障がないことを確認することが望ましい。
《主な項目とチェックポイント》
○決算書、各勘定明細: 必要な資料が少なくとも直近3年分あるか 等
○税務関係書類 : 書類の税務署受領印(電子申告の場合、受付通知)の確認 等
○試算表、資金繰り表: 支援者から求められた際に提供できる体制となっているか 等

情報開示等の内容の正確性

支援者は、事業者が作成している資料の内容の正確性に問題がないかを確認し、課題点を抽出していくことが重要である。例えば、各勘定明細の項目の粒度が適切か(「その他」が過大で詳細が分からないようになっていないか)や、直近 3 年分の項目の抽出、比較を行った結果、計数の内容やその変動に不自然な点がないかなどを確認する。

事業者と経営者の資産等の分別管理

支援者は、事業者の情報開示等の内容の正確性が一定程度確保された段階で、事業者の業務、経理、資産所有等に関し、事業者と経営者との間の関係の明確な区分・分離の状況や資金のやり取りの内容を確認する。 この際、事業者の規模や経営者が思い描く「ありたい姿」や「将来像」を勘案することが重要である。
《主な項目とチェックポイント》
○資産所有等の区分・分離 : 例えば、経営者が事業者の事業活動に必要な本社・工場・営業車等の資産を有している場合、適正な賃料が支払われているかを確認する。
○事業者と経営者の資金のやり取り: 事業者の規模等にかかわらず、事業者から経営者への事業上の必要が認められない資金流用(貸付金、未収入金、仮払金等)がないかを確認する。事業規模が大きい先や経営者が企業規模の拡大等を目指していく先は事業者の経営者からの借入金等のやり取りを解消するよう取り組んでいくことが望ましい。
また、 役員報酬については、事業者の業況が継続的に悪化し、借入金の返済に影響が及ぶ場合には、経営者が自らの報酬を減額する等の対応を行う方針にあるかを確認する。

内部管理体制の構築

ローカルベンチマークを参考に、組織管理体制(外部の意見を取り入れる組織運営体制となっているか)、品質管理・情報管理体制(リスクに十分対応できる品質管理・情報管理体制を構築できているか)、事業計画・経営計画の有無(目標の進捗管理はできているか、目標を達成するための具体的な活動が決められているか)、従業員との共有状況(経営理念を踏まえた経営目標が設定され、従業員に浸透しているか)、社内会議の実施状況 (会議は次の改善や改革につながっているか) 、 事業継続計画(BCP)対応状況(事業の存続に影響する事象(自然災害等)が起こった場合の対策は講じられているか)などを支援者は経営者と対話しつつ確認し、必要な改善を促す必要があります。

課題明確化

現状分析で把握した課題点について、その原因と今後の対応等について検討し、 事業者のガバナンス体制の整備に向けて対応すべき課題を明確化します。
ここでは、経営者自身が納得した取組を自らの意思で行うことが重要であり、支援者は、経営者が思い描く「ありたい姿」 、 「将来像」を確認し、それに見合った課題を設定しつつ、適切に動機付けしていくことが重要です。
このため、経営者は、なるべく多くの情報を共有した上で、経営者にとっての本質的な課題解決に向けて、ガバナンス体制の整備の目的を明確にしていくことも重要です。
《検討が不十分な事例》
・法人のみの資産・収益力で借入返済が難しい「財務基盤の強化」の課題点の原因を収益力のみ
に着目
⇒収益力だけでなく、そもそも借入金が事業規模に対して過大でないか、資金使途を確認した上で、余剰な借入金が無いかを確認することが必要

対応策の検討と事業者へのアドバイス

経営者及は、以下の着眼点や前回記事『課題解決策の検討』を参考に、効果的かつ実行性の高い解決策を検討します。また、計画の実施中に、各ステークホルダーとの意見交換を通じてガバナンス体制の整備状況を把握するとともに、経営者が課題解決に向けて自らの意思で取り組むよう動機付けすることが重要です。
また、 役員報酬については、事業者の業況が継続的に悪化し、借入金の返済に影響が及ぶ場合には、経営者が自らの報酬を減額する等の対応を行う方針が必要か検討します。
① 明確化された課題に対して、例えば、法人と経営者の間の資金の流れを整理する等の経営の見える化を含めて解決策を検討する。
② 時間や資源(ヒト・モノ・カネ)は限られることから、課題が複数ある場合は、取り組むべき優先順位及び実施スケジュール、担当者の明確化等の実施体制も併せて整理することで、必要不可欠な取組が中途半端にならないよう検討する。
③ 経営者が納得し、能動的なアクションにつなげていくため、対応策の具体化は経営者と摺り合わせながら策定する。
④ 計画の実施中は、経営者と支援者との意見交換に加え、 「 【別添3】ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」 を用いた達成状況の確認や他社の事例等を踏まえたアドバイスができる各都道府県の中小企業活性化協議会との意見交換を併せて行うことも有用である。
《検討が不十分な事例》
・事業上の必要が認められない事業者から経営者への貸付金の解消計画を策定することのみで法人と経営者との関係の明確な区分・分離が達成したと評価
⇒貸付金の資金使途等を確認することで、事業上の必要が認められない資金が流出した要因を把握し、根本的な原因の解消に向けた意見交換を行うことが必要

まとめ

今回まで3回を使い、売上アップのための実践的ノウハウをご紹介しました。

ボリュームがあり、なかなか自社でやり切れないところもあるかと思います。

当公認会計士事務所は長年の経験を持つコンサルタントとして、数字や正確な現状把握に基づくアドバイスを得意としています。経営の課題にお悩みの際は、気軽にご相談くださいませ。確かな知見とノウハウを活かし、お客様の事業発展に貢献できますよう尽力いたします。

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