Audit Plus 高橋公認会計士事務所

2024/8/30

SBOM導入で企業のソフトウェアリスクを可視化:経営者が知るべき次世代セキュリティ戦略

SBOMが拓く新時代のソフトウェアリスク管理

近年、企業のデジタル化が加速する中、ソフトウェアの重要性が飛躍的に高まっています。しかし、その裏では深刻なリスクが潜んでいます。驚くべきことに、84%のコードベースに少なくとも1つの脆弱性が含まれているという調査結果があります。さらに、2021年には62%の企業がソフトウェアサプライチェーン攻撃の影響を受けたとされ、その被害は年間収益の約11%にも及ぶケースがありました。

このような状況下で、経営者の皆様にとって、ソフトウェアリスクの可視化と管理は喫緊の課題となっています。そこで注目を集めているのが「SBOM(Software Bill of Materials)」です。SBOMは、ソフトウェアの構成要素を一覧化する「部品表」のようなもので、これを活用することで、企業のソフトウェアリスク管理を劇的に改善できる可能性があります。

SBOMがもたらす3つの革新的メリット

1. 脆弱性管理の効率化とコスト削減

SBOMの最大の特徴は、ソフトウェアに含まれるすべてのコンポーネントを可視化できることです。これにより、脆弱性が発見された際の影響範囲の特定が格段に容易になります。実際、ある医療機器分野の実証実験では、SBOMを活用した脆弱性管理により、手動管理と比較して工数が70%も削減されました。

さらに興味深いのは、SBOMツールを使用することで、OSS(オープンソースソフトウェア)間の依存関係や再帰的な利用も効率的に検出・管理できるようになることです。これは、従来の管理方法では見落とされがちだった潜在的なリスクを洗い出すことができるという点で、画期的です。

2. ライセンス管理の強化によるコンプライアンスリスクの低減

SBOMのもう一つの重要な側面は、ライセンス管理の強化です。OSSの利用が一般化する中、ライセンス違反のリスクは看過できません。実際、過去には大手家電メーカーが14社もGNU General Public License(GPL)違反で起訴された事例があります。

SBOMを活用することで、使用しているソフトウェアのライセンス情報を正確に把握し、違反リスクを大幅に低減することができます。これは単なるリスク管理だけでなく、企業の信頼性向上にも直結する重要な要素です。

3. 開発生産性の向上とイノベーションの加速

SBOMの導入は、意外にも開発生産性の向上にも寄与します。Linux Foundationの調査によると、SBOM導入企業の51%が「開発者がより広範で複雑なプロジェクト間の依存関係を理解しやすくなる」と回答しています。これは脆弱性管理やライセンス管理のメリットを上回る高評価です。

具体的には、SBOMを活用することで、コンポーネントに関する問題を早期に特定し、開発遅延を防ぐことができます。また、過去のSBOMを参照することで、新規開発時のコンポーネント選定工数を削減することも可能です。これらの効果は、イノベーションの加速につながる可能性を秘めています。

SBOM導入の具体的ステップと注意点

ステップ1: SBOM適用範囲の明確化

SBOM導入の第一歩は、適用範囲の明確化です。ここでは、対象ソフトウェアの開発言語、コンポーネント形態、開発ツールなどの情報を整理します。さらに、ソフトウェアの正確な構成図を作成し、SBOM適用の対象を可視化することが重要です。

注意すべきは、単にツールを導入するだけでは不十分だということです。組織内外の開発者の知見を活用し、効率的な情報収集を行うことが成功の鍵となります。

ステップ2: SBOMツールの選定

次に、適切なSBOMツールの選定が必要です。ここでは、機能、性能、解析可能な情報、コスト、対応フォーマットなど、多角的な観点から評価を行います。

興味深いのは、有償ツールと無償ツールの特性の違いです。有償ツールは一般に高価ですが、ユーザーインターフェースが充実しており、直感的な操作が可能です。一方、無償ツールはコスト面で魅力的ですが、環境整備や学習に多大な工数を要する可能性があります。

ステップ3: SBOMツールの導入・設定

ツール選定後は、実際の導入・設定フェーズに入ります。ここでの注意点は、ツールが動作する環境要件の確認です。特に、一部のツールではLinux環境が必須であるなど、予想外の制約がある場合があります。

また、SBOMツールを脆弱性管理に活用する場合、障害等の影響でツールが停止し、脆弱性の検知が滞ることのないよう、稼働監視やデータの定期的なバックアップを実施する必要があります。これは、セキュリティ管理の継続性を確保する上で極めて重要なポイントです。

ステップ4: コンポーネントの解析と検証

SBOMツールを用いてソフトウェアのスキャンを行い、コンポーネントの情報を解析します。ここで注目すべきは、ツールの出力結果を鵜呑みにしないことです。実証実験では、シンボリックリンクやランタイムライブラリなど、ツールで検出されないコンポーネントが存在することが明らかになっています。

さらに、下位のコンポーネントほど検出漏れ率が高くなる傾向があります。このため、ツールの出力結果を人手で確認し、誤検出や検出漏れがないか精査することが不可欠です。

SBOM活用の未来:AI活用と国際標準化の波

SBOMの活用は、今後さらに進化していく可能性があります。特に注目されるのが、AI技術との融合です。例えば、機械学習を用いてSBOMの解析精度を向上させたり、脆弱性の自動予測を行ったりすることが考えられます。これにより、より高度で効率的なリスク管理が可能になるでしょう。

また、SBOMの国際標準化の動きも加速しています。米国では政府調達におけるSBOM提供の義務化が検討されており、EU市場でも同様の動きがあります。日本企業も、グローバル市場での競争力維持のために、これらの動向を注視し、積極的な対応を検討する必要があります。

経営者への提言:SBOMを戦略的投資として捉える

SBOMの導入は、単なるコスト要因ではなく、戦略的投資として捉えるべきです。具体的には以下の行動を提案します:

  1. SBOM導入のロードマップ作成:短期・中期・長期の目標を設定し、段階的な導入計画を立てる。
  2. クロスファンクショナルチームの編成:IT部門だけでなく、法務、調達、品質管理など、関連部門を巻き込んだチーム編成を行う。
  3. パイロットプロジェクトの実施:小規模なプロジェクトでSBOMを試験的に導入し、効果検証と課題抽出を行う。
  4. サプライヤーとの協力関係構築:SBOMの効果を最大化するには、サプライチェーン全体での取り組みが重要。主要サプライヤーとの協力関係を構築する。
  5. 継続的な教育・啓発:SBOM導入の意義や効果について、社内での理解促進を図る継続的な取り組みを行う。

結論:SBOMは次世代のリスク管理の要

SBOMの導入は、単なるツールの導入以上の意味を持ちます。それは、企業のソフトウェア資産を戦略的に管理し、リスクを最小化しながら、イノベーションを加速させる包括的なアプローチです。

確かに、SBOMの導入には初期投資とリソースの投入が必要です。しかし、その見返りとして得られるリスク低減効果と生産性向上は、長期的に見れば大きな競争優位性につながります。

デジタル化が進む現代のビジネス環境において、SBOMの導入は、もはや選択肢ではなく必須の取り組みと言えるでしょう。経営者の皆様には、SBOMを次世代のリスク管理の要として捉え、積極的な導入検討を強くお勧めします。

当社は、こうした企業のニーズに応えるべく、包括的なサポートを提供しています。詳細については、当社サービス紹介 をご覧ください。SBOMによる新たなリスク管理の時代に、皆様の企業が先駆者となることを願っています。

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