2024/2/25
自社で実施する経営診断シリーズ:①中小企業の経営診断プロセス
自社の経営状況をより深く理解し、改善策を立てるためには、経営診断が不可欠です。このシリーズでは、経営診断のステップを分かりやすく解説し、皆さんが自社で診断を実施するための具体的なアプローチを提供します。今回は、経営診断の基本となるプロセスに焦点を当てます。このシリーズを通じて、皆様の事業改善に役立つ知見を得られることを目指しています。
予備診断 – 経営診断への入口
予備診断は経営診断の最初の簡易診断プロセスです。この段階では、経営層と面談を行い、企業理念や経営課題を理解します。また、SWOT分析を行って経営層が考える企業のあるべき姿を明らかにし、事業ドメインと経営戦略の方向性を考えます。予備診断では、企業の全体像を把握するための資料の提出をお願いします 。
1. 経営層との面談の準備と実施:
• 経営層や主要スタッフとの面談を準備します。この面談で、企業理念、経営課題、目指すべき企業の姿について深く議論します。
• 面談では、経営層の見解や意見を詳細に聞き出し、企業の現状と将来の方向性についての洞察を深めます。
2. SWOT分析の実施:
• 企業の強み、弱み、機会、脅威を評価するため、SWOT分析を実施します。
• 分析は、内部要因(強みと弱み)と外部要因(機会と脅威)の両面から行い、企業が直面している課題と可能性を明らかにします。
3. 事業ドメインの検討:
• 企業の現在の立ち位置と将来目指すべき方向性を明確にします。この段階で、市場の動向、競合の状況、顧客のニーズなどを分析します。
4. 資料の収集と分析:
• 財務諸表、製造原価報告書、組織図、会社案内などの資料を収集します。
• 収集した資料を基に、企業の財務状況、組織構造、事業活動を詳細に分析し、現状の理解を深めます。
留意点
• 個別の事業所固有の状況の考慮:各事業所の固有の状況を考慮し、ワンパターンのアプローチを避けることが重要です。業種や業態によって異なるニーズと特性を理解し、それに基づいた診断を行います 。
• 迅速かつ慎重な実施:予備診断は迅速に実施し、結果を経営層に早期に提供することが重要です。同時に、診断の質を確保するために慎重さも必要です。
本診断 – 現状分析から課題抽出まで
本診断の主な目的は、予備診断で検出した課題や改善のための仮説を検証し、経営戦略診断よりも詳細な実務レベルでの現状分析と分析を行うことです。これにより、組織が直面している課題の本質を理解し、有効な改善策を導出することができます
1. 課題と改善仮説の検証
本診断の最初のステップは、予備診断で特定された課題と改善のための仮説を検証することです。この段階では、予備診断で得られた情報を基に、問題の本質を深く理解し、改善策が有効かどうかを評価します。具体的には、予備診断で特定された課題(例えば、売上の減少、生産性の低下、高い従業員離職率など)について、それらが生じている具体的な原因を探求します。これには、内部データのさらなる分析、関連する市場や業界の動向の調査、従業員や顧客からのフィードバックの収集などが含まれます。改善のための仮説(例えば、製品ラインの最適化、営業戦略の見直し、従業員研修プログラムの導入など)が提案されている場合、これらの仮説が課題解決に寄与するかどうかを検証します。このプロセスは、企業が直面する問題を深く理解し、有効な解決策を導き出すために不可欠です 。
2. 詳細な情報収集
本診断では、予備診断で得た情報をもとに、さらに詳細な情報を収集します。情報収集の範囲と深さは、企業のサイズ、業種、市場環境などによって異なりますが、一般的には、財務データ(損益計算書、貸借対照表など)、市場データ(市場シェア、顧客分析、競合分析など)、生産プロセス(生産効率、品質管理、供給チェーン管理など)、人事・労務情報(従業員満足度、人材流動性、研修プログラムなど)などが含まれます。詳細な情報収集は、企業が抱える問題のより深い理解を可能にし、その結果、より効果的な改善策を導き出すために不可欠です。収集した情報は、後のステップでの分析と評価のための基盤となります 。
3. 診断の切り口と優先順位の設定
診断の切り口と優先順位の設定は、本診断プロセスにおいて重要なステップです。この段階では、どの側面から課題を分析するか、どの課題に優先的に取り組むかを決定します。診断のアプローチは、企業固有の状況に合わせてカスタマイズする必要があります。たとえば、財務上の課題が最も緊急である場合、まず財務データの詳細な分析から始めることが適切かもしれません。逆に、従業員の士気や労働生産性が主要な懸念事項であれば、人事・労務データや従業員満足度調査から手を付けるべきです。重要なのは、診断の方向性を明確にし、それに基づいて適切な情報収集と分析を行うことです。
4. 実地調査の実施
実地調査は、企業の現場を直接視察し、本診断のための重要な情報を得る過程です。これには、工場見学や生産ラインの観察、従業員との面談などが含まれます。例えば、製造業の場合、生産プロセスの効率性や品質管理の問題点を直接目で確認することができます。また、従業員との面談を通じて、労働条件、職場の雰囲気、コミュニケーションの問題点など、数値化されたデータだけでは捉えられない情報を収集できます。このステップは、問題の本質を理解する上で非常に重要で、組織内部の実際の状況を詳細に把握するために必要です。
5. 面談の実施
面談では、管理職や担当者まで含めて多様な従業員の意見や感想を聞きます。これにより、組織内の問題点や改善のためのアイデアを収集し、問題の本質をより深く理解することができます。面談は、従業員の士気やモチベーション、組織内のコミュニケーションの流れ、労働環境など、企業文化や組織ダイナミクスに関する貴重な洞察を提供します。このプロセスは、従業員の視点から組織の強みと弱みを理解するのに役立ちます。
6. 財務情報の分析
(1) 収益性の分析:
• 収益性分析は、企業がどの程度利益を上げているかを評価することです。これには、投下された資本に対してどれだけの利益を上げているか、売上に対してどれだけの利益を上げているかの二つの視点があります。資本利益率は、売上利益率と資本回転率の相乗積であり、この指標を用いて企業の収益性を評価します。また、損益計算書上の利益の各段階(総利益、経常利益、営業利益)を考慮し、売上高に対するこれらの利益率を段階的に検討することが重要です 。
(2) 流動性の分析:
• 流動性分析は、企業の短期的な支払能力を評価するものです。流動比率や当座比率、固定比率、固定長期適合率、自己資本比率、負債比率などの経営分析比率を用いて、企業の財務構造や安全性を評価します。これらの比率を分析することで、企業の短期および長期の財務健全性を判断します 。
(3) 損益分岐点分析:
• 損益分岐点分析は、企業が採算を取れる売上高を特定することを目的とします。これは、費用と収益が等しくなる売上高の点であり、利益計画と密接に関連します。企業が維持するための必要利益や目標利益を予定し、売上高と費用を計画・管理することが、この分析の目的です 。
(4) 財務状況の評価:
• 財務分析、キャッシュフロー分析、損益分岐点分析の結果に基づいて、企業の財務状況を評価します。この評価には、債務支払能力の評価が含まれます。企業が現在および将来にわたって債務を適切に支払う能力があるかどうかを判断することが、この評価の鍵となります 。
これらの分析を通じて、企業の財務状況の強みと弱みを詳細に理解し、適切な改善策を導き出すことができます。財務情報の分析は、本診断プロセスにおいて非常に重要な役割を果たし、企業の経済的健全性と持続可能性を評価する基礎となります。
実践指導 – 計画の実行と評価
実践指導では、事前に策定された実行計画に基づいて、実際の実施状況を進捗管理を通じて具体的に指導します。この段階で最も重要なことは、実行計画が確実に遂行されているかどうか、そして設定された目標が達成されているかどうかを確認することです 。実践指導の目的は、計画に基づいた具体的なアクションを実現し、目標達成を目指すことにあります。この過程で、計画の効果的な実行だけでなく、適時に必要な調整を行いながら、組織の目標に向けて進めることが重要です。
1. 実施状況の進捗管理:
• 実施状況は、設定された実行計画に沿って、定期的にチェックします。進捗管理は、実行計画が正しく遂行されているかを確認し、計画に基づいたアクションが効果的に進んでいるかを測定するために不可欠です。
• 実践指導の頻度は、計画の内容や組織の体制に応じて、1ヶ月ごとや半年ごとなどの間隔で設定されます。
2. 目標達成度の確認と評価:
• 実施状況の確認とともに、設定された目標の達成度を評価します。これには、定量的な指標(売上、利益率、顧客満足度など)や定性的な指標(従業員のモチベーション、顧客のフィードバックなど)を用いることがあります。
• 目標が達成されていない場合、その要因を分析し、計画の修正や追加のアクションが必要かどうかを検討します。
実践指導の留意点
• 実行計画の適時調整:計画は常に現実の状況に合わせて柔軟に調整する必要があります。市場の変動、内部の変化、技術の進歩などにより、計画の一部を見直す必要が生じることもあります。
• 関係者とのコミュニケーション:実践指導では、計画の遂行に関わるすべての関係者との定期的なコミュニケーションが重要です。計画の進捗状況を共有し、必要に応じて意見交換や調整を行います。
実践指導は、計画の実行と目標達成のための重要なステップです。この段階での効果的な管理と適時の調整は、組織の成功にとって不可欠な要素となります。
ここまでが中小企業の経営診断プロセスになります。
次回は人事労務診断のアプローチについて触れようと思います。
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