2024/9/19
自治体DXの現状と課題:進捗状況と今後の展望
自治体DXの重要課題:人口規模による二極化と専門知識の不足
自治体におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、地域社会のデジタル化と住民サービスの向上に不可欠な取り組みです。新型コロナウイルスのパンデミックが引き金となり、急速にデジタル社会への移行が進んでいますが、日本の自治体におけるDXの進捗は、人口規模やリソースに強く依存している現状があります。
総務省が2021年度から2023年度にかけて実施した「自治体DX・情報化推進概要」では、自治体DXの全体的な進捗は一定の成果を見せており、CIO(最高情報責任者)の任命や職員の研修など、比較的着手しやすい項目では高い実施率を示しています。2021年度のCIO任命率は70.1%であったのに対し、2023年度には73.3%に増加しています。また、全庁的・横断的な推進体制の構築も2021年度の27.6%から2023年度には65.4%にまで上昇し、自治体のDX推進体制は着実に強化されているといえます。
しかし、進捗は自治体の人口規模によって大きく異なります。特に町や村といった小規模自治体では、DXの進展が遅れがちです。多くの小規模自治体では、限られた財源や人材、技術的な専門知識の不足が課題となっており、これがDX推進を妨げる要因となっています。例えば、2023年度において小規模自治体の外部デジタル人材の任用率は、2021年度の9.4%から19.8%に上昇しましたが、依然として低水準にとどまっています。
このような格差を是正し、全国的に自治体DXを推進するためには、都道府県や中核都市が率先して小規模自治体をサポートする体制が不可欠です。具体的には、技術支援や人的支援、財源の確保、さらには共同でのデジタル人材育成といった取り組みが求められます。また、国全体としても、自治体DXの進捗が芳しくない地域に対して、より積極的な支援策を講じることが必要です。
---
自治体DXトレンドの影響と機会:技術導入の格差とマイナンバーカードの普及状況
自治体DXの進展において、特に注目すべきは技術導入の格差です。AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった先端技術の導入が進んでいますが、自治体間でその進捗には大きな差が生じています。
2023年度の調査によると、RPAの導入率は2021年度の9.1%から2023年度には41.4%に急増していますが、町や村といった小規模自治体では依然として導入が進んでいません。大規模自治体では、AIを活用したチャットボットによる住民対応や、RPAを利用した業務の自動化が進んでいる事例が見られます。例えば、神奈川県横浜市では、AIを利用した住民サービスが導入され、問い合わせ対応の効率化が図られています。しかし、小規模自治体では、こうした技術を導入するための予算や人的リソースが不足しているため、技術革新の恩恵を受けにくい状況が続いています。
一方、マイナンバーカードの普及状況は、自治体DXの進捗とは必ずしも連動していない点が興味深いところです。総務省の調査によると、2023年度のマイナンバーカードの全国保有率は70%以上に達しており、宮崎県では80%を超える普及率を記録しています。これは、マイナポイント制度など、国による普及促進策の効果が大きいと考えられます。しかし、カードの普及率と自治体DXの進捗には強い相関が見られません。マイナンバーカードは普及しているものの、それを活用した行政手続きのオンライン化や、住民サービスのデジタル化が進んでいないケースが多々見られます。
こうした状況に対して、自治体はマイナンバーカードを単に普及させるだけでなく、その活用を通じて住民向けのデジタルサービスを拡充する必要があります。例えば、マイナンバーカードを使った行政手続きのオンライン化や、健康保険証としての利用、さらには地域独自のサービスへの連携を促進することで、住民の利便性を大きく向上させることが可能です。特に、住民にとっての現実的なメリットを強調することで、カードの利用価値が高まり、自治体DXの一環としての導入が進むでしょう。
---
自治体DXの課題解決アプローチ:都道府県と基礎自治体の連携による底上げ
自治体DXをさらに推進するためには、特に人材や財源が限られる小規模自治体に対して、都道府県や中核都市がサポートする体制を整えることが急務です。自治体DXの課題を解決するための具体的なアプローチとして、自治体間での連携強化が重要視されています。
東京都が設立した「GovTech東京」や、静岡県の「ふじのくにDX推進計画」などは、自治体間連携の成功例として挙げられます。東京都は、都内の区市町村と連携し、DX推進に欠かせない技術基盤の強化や、システムの共通化を進めています。これにより、区市町村が個別にシステムを導入する負担を軽減し、効率的なDX推進が可能となっています。
また、静岡県では、県主導で市町村DX推進を支援しており、県の幹部が全市町村を訪問してDX推進状況を共有し、支援体制を強化しています。この取り組みは、自治体間の情報共有や協力体制の整備において非常に有効なモデルとなっています。同様に、大分県では「市町村行政DX共同目標」を設定し、県が市町村の電子化やデジタル人材の確保を支援することで、地域全体でのDX推進を加速させています。
こうした先進的な例は、他の地域でも参考にされるべきです。特に、自治体間でのシステムやサービスの共通化、共同調達の導入、デジタル人材の共有といったリソースの効率的な活用が重要です。DX推進専任部署や外部デジタル人材の任用も、都道府県や中核都市と連携して進めることで、小規模自治体でも効率的なDX推進が可能になるでしょう。
このような連携体制は、単に技術的な支援にとどまらず、自治体全体の組織改革や業務プロセスの見直しにも寄与します。より効率的で住民にとって利便性の高いサービスを提供するためには、自治体間の連携強化が不可欠です。
---
課題解決への対応の落とし穴:技術導入だけでは解決しない問題
自治体DXにおいて、技術導入そのものが目的となってしまうことは、よくある誤解です。多くの自治体では、システムや技術の導入に重点を置きがちですが、これだけでは住民にとっての利便性向上や業務効率化は実現しません。この点において、技術導入だけではなく、組織改革や業務プロセスの見直しが不可欠です。
例えば、電子決裁システムの導入が遅れている自治体では、テレワークの導入すら困難な状況にあります。電子決裁システムは、行政業務の効率化や透明性の向上に寄与するはずですが、その導入がうまくいかない場合、逆に業務の負担が増えてしまうこともあります。システムの使い勝手や業務フローの見直しが不十分なまま導入されると、職員が新しいシステムに対応しきれず、業務が滞ることがあります。
さらに、DX推進に関する全体方針を策定している自治体でも、進捗状況を把握し適切に評価するためのKPI(重要業績評価指標)や工程表を設定していないケースが見受けられます。これでは、DXの進捗を評価できず、改善に向けたアクションが取れないという問題が生じます。技術導入だけでなく、DX推進の進捗を定期的に評価し、必要に応じて柔軟に対応できる体制を整えることが求められます。
DXの本質は、単に技術を導入することではなく、業務プロセスの最適化や住民サービスの改善にあります。そのため、自治体全体でDX推進の意義を共有し、組織文化の改革を伴った取り組みが不可欠です。
---
課題解決の重要ステップ:段階的な取り組みとKPIの設定
自治体DXを成功させるためには、段階的な取り組みが不可欠です。総務省が示す「自治体DX全体手順書」では、DX推進の手順がステップごとに整理されています。まずは、庁内での認識共有や機運醸成が第一歩となり、その後、推進体制の整備や技術導入が進められます。
特に重要なのは、DX推進の進捗を定期的に評価し、改善を行うための指標設定です。KPIを設定し、業務プロセスやシステムの利用状況を定期的に把握・評価することで、DXの進捗を適切に管理できます。具体的なKPIとしては、電子決裁システムの導入率や、オンライン行政手続きの利用率、RPAによる業務自動化の進展状況などが挙げられます。また、住民アンケートを通じて、デジタルサービスの利用満足度を測定することも重要です。
さらに、都道府県や中核都市との連携を強化し、共同でシステム導入や人材育成を進めることも、重要なステップです。GovTech企業との連携も視野に入れ、技術面だけでなく、住民サービスの向上を目指した取り組みを進めていく必要があります。
---
結論:自治体DXの現状と今後の展望
自治体DXは、新型コロナウイルスの影響を受けて加速していますが、自治体間での進捗には大きな差があります。特に人口規模の小さな自治体では、人材や専門知識の不足により、DXの進展が遅れている状況が見られます。
今後の自治体DXの展望としては、都道府県や中核都市が中心となって、小規模自治体を支える協力体制を強化することが重要です。さらに、技術導入だけでなく、業務プロセスの見直しや組織改革を進め、住民にとって利便性の高いサービスを提供できるよう、取り組みの改善が求められます。
また、マイナンバーカードの普及を契機に、デジタルサービスの利用促進を図ることも重要です。GovTech企業との連携や、共通プラットフォームの構築を通じて、自治体DXのさらなる発展を目指していく必要があります。
今後のDX推進においては、技術だけでなく、住民のニーズに応えられるサービス提供を重視し、地域全体のデジタル化を進めていくことが求められます。
Photo by ISO10 on Unsplash
無料計算ツールをご活用ください
経営判断に役立つシミュレーションツールをご用意しています。
登録不要ですぐにご利用いただけます。