Audit Plus 高橋公認会計士事務所

2025/1/29

日本のエンタメ・クリエイティブ産業の挑戦と未来:世界市場での競争力強化

はじめに

近年、エンタメ・クリエイティブ産業は、世界経済において重要な役割を果たすようになっています。経済産業省の資料(第1回エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会事務局資料)によると、2022年の世界のコンテンツ市場規模は13.1兆円に達し、日本は世界第3位の市場規模を誇っています。しかし、急速なデジタル化やグローバル化の進展により、この産業を取り巻く環境は大きく変化しており、日本はこの変化にどう対応していくかが問われています。特に、海外市場における競争激化や、国内市場の縮小といった課題に直面しており、これらの課題を克服し、更なる成長を遂げるためには、戦略的な取り組みが不可欠です。 特に、日本のエンタメ・クリエイティブ産業は、アニメやゲームといった特定の分野で世界的な評価を得ていますが、その一方で、映像(実写映画やドラマ)や出版といった分野では、国内市場に比べて海外市場での展開が遅れているという現状があります。PDF資料によると、アニメ分野の海外売上は2010年から2022年の間に5.1倍に成長していますが、映像分野は3.3倍、出版分野は2.7倍にとどまっています。さらに、音楽分野については、具体的なデータが存在しないという課題も抱えています。また、デジタル化の波に乗り遅れている分野もあり、これらの分野においても成長戦略を検討する必要があります。例えば、映像分野のデジタル化率は71.0%、音楽分野は52.5%にとどまっており、中国やアメリカに比べて遅れています。また、クリエイターの育成や労働環境の改善、海外展開を支援する体制の構築といった課題も山積しています。これらの課題を解決し、日本のエンタメ・クリエイティブ産業が持続的に成長していくためには、官民一体となった取り組みが不可欠です。

現状分析

世界のコンテンツ市場規模は、年々拡大しており、特にデジタルコンテンツの成長が著しいです。経済産業省の資料によると、2022年の世界のコンテンツ市場規模は13.1兆円に達し、日本は世界第3位の市場規模を誇っています。しかし、中国は2013年に日本を抜き、現在では日本の2.5倍の市場規模に成長しており、その成長スピードには目を見張るものがあります。2022年時点での市場規模は、中国が33.2兆円、アメリカが75.5兆円となっており、日本は13.1兆円です。コンテンツ産業の世界市場規模は、石油化学産業や半導体産業よりも大きいという事実も、その重要性を示しています。PDF資料によると、コンテンツ産業の世界市場規模は205.4兆円であり、石油化学産業の89.9兆円、半導体産業の77.0兆円を大きく上回っています。また、日本由来のコンテンツの海外売上は、鉄鋼産業や半導体産業の輸出額に匹敵する規模であり、日本の経済においても重要な役割を果たしています。2022年のデータでは、コンテンツ産業の海外売上は4.7兆円であり、鉄鋼産業の5.1兆円、半導体産業の5.7兆円とほぼ同等の規模となっています。 しかし、日本のエンタメ・クリエイティブ産業の海外売上は、一部の分野を除いて海外企業に流れているという現状があります。例えば、アニメ分野では海外売上が大きく伸びていますが、映像や出版分野では国内市場に比べて海外市場での展開が遅れているという課題があります。コンテンツ分野別の海外売上を見てみると、アニメ分野は5.1倍、ゲーム分野は4.7倍と大きく成長している一方で、出版分野は2.7倍にとどまっており、分野によって成長度合いに大きな差があることがわかります。さらに、音楽分野についてはデータが存在しないという課題もあり、正確な現状把握が難しい状況です。また、コンテンツ関連産業の国内市場規模を見てみると、関連産業市場(PC機器、撮影・音響機器等)が108.4兆円、ライセンス利用市場(キャラクター市場、公演・イベント等)が17.3兆円と、自産業市場の13.1兆円よりも大きいことがわかります。このことからも、コンテンツの多角的な活用が、産業全体の成長に不可欠であることがわかります。 また、コンテンツ産業を取り巻く環境も大きく変化しています。グローバルプラットフォームからの配信により、全世界へのアクセスが容易になる一方で、デジタル化の遅れが目立つ分野もあります。例えば、映像分野ではデジタル化率が71.0%、音楽分野では52.5%にとどまっており、中国やアメリカに比べてデジタル化が遅れていることがわかります。中国の映像配信市場はほぼ100%がデジタル化されており、アメリカも94.3%と高い水準です。さらに、コンテンツ消費の形態も変化しており、これまではコンテンツごとに独立したメディアで消費されていたものが、スマートフォンなどの様々なメディアであらゆるコンテンツを楽しむことができるようになっています。このような環境の変化に対応するためには、各市場のニーズを踏まえ、グローバルな視点での戦略が必要不可欠です。さらに、コロナ禍以降、余暇活動の過ごし方も変化しており、動画鑑賞が定着する一方で、映画館での体験型シートの人気が高まるなど、非日常的な体験へのニーズが高まっています。例えば、映画館のチケット料金は2021年に過去最高を記録しており、これはIMAXなどの体験型シートの人気が背景にあると見られます。このような消費者の嗜好の変化を捉え、新たなコンテンツの提供が必要とされています。 さらに、海外に目を向けると、韓国のコンテンツ産業の台頭が著しいです。韓国コンテンツ振興院(KOCCA)は、海外市場規模へのリーチを広げるため、主要国にビジネスセンターを設営し、市場拠点を拡大しています。PDF資料には、KOCCAがロサンゼルス、北京、東京、パリ、ジャカルタ、ハノイ、ドバイにビジネスセンターを設置していることが示されています。また、コンテンツ各分野の海外売上を日韓で比較すると、ゲームやアニメを中心に日本が大きいものの、海外売上の成長率で比較すると、アニメを除く分野で韓国が勝っています。例えば、2010年から2021年の間の年平均成長率で比較すると、ゲーム分野では日本が19.1%、韓国が18.3%、映像分野では日本が19.8%、韓国が24.1%、音楽分野では日本が21.4%、韓国が25.0%、マンガ分野では日本が4.1%、韓国が21.1%となっています。これらの状況を踏まえると、日本は海外市場において、より積極的な戦略が必要とされています。

課題への取り組み方

これらの課題に対応するため、政府は「新たなクールジャパン戦略」を策定し、2033年までにコンテンツ産業の海外市場規模を20兆円に拡大するという目標を掲げています。この目標達成のため、政府はクリエイター支援を強化し、コンテンツ産業の活性化戦略を進めています。具体的には、クリエイターが働きやすい環境の整備、海外展開の支援、デジタル技術の活用などが挙げられます。また、コンテンツ産業官民協議会を設置し、官民連携による戦略的な取り組みを推進しています。さらに、文化庁では、クリエイター育成や文化施設の高付加価値化を支援する事業を実施し、3年間で100億円の予算を投入しています。これらの取り組みを通じて、日本のコンテンツ産業の持続的な成長を目指しています。 クリエイター支援に関しては、クリエイターが安心して持続的に働ける環境を整備することが重要です。具体的には、取引関係の是正、支援策の検討、労働環境の改善などが挙げられます。例えば、契約における透明性の確保や、報酬の適正化などが求められます。また、海外市場の獲得に向けては、市場環境、ビジネスモデル、プラットフォーム、ターゲット等の変化を捉え、官民が連携して戦略的に取り組む必要があります。そのため、戦略構築に資する海外マーケティングデータの整備、市場調査、海外拠点との連携、ビジネスマッチングの推進などが不可欠です。さらに、海外展開を阻害する権利侵害等への対応も強化する必要があります。海賊版対策は、コンテンツの正当な収益を確保するために不可欠であり、国際的な連携を強化していく必要があります。さらに、コンテンツの戦略的なセールスチャンネルを開拓し、海外での売り場づくりを推進することも重要です。クリエイターの育成に関しては、IPを生み出すクリエイターの育成支援を強化するとともに、エンタメスタートアップ支援、他産業からのエンタメコンテンツに対する流入の拡大、作品・クリエイターに対する国際的評価の獲得などを推進する必要があります。 また、コンテンツの多角的な活用も重要です。IPを地方創生や他産業の成長に活用することで、地域経済の活性化や、高付加価値な新商品・サービスの創出、企業・商品ブランドの国際競争力向上に繋げることが期待されます。例えば、アニメの舞台となった場所を観光地として活用したり、キャラクターを地方の特産品とコラボレーションさせたりする事例があります。そのため、IPを起点としたクロスオーバーによる他産業の高付加価値の実現、IP・ファンダムを活用した地域活性化の推進、IPを目的としたインバウンド及びビジネスインバウンドの拡充などが必要不可欠です。さらに、デジタル技術の活用も重要です。AIを含めたデジタル技術の開発と適正な利活用は、産業成長のドライバーとなります。例えば、AIを活用した翻訳技術によって、コンテンツの多言語展開を効率化したり、AIによるキャラクターデザインや音楽制作を支援したりする事例があります。クリエイターがデジタル技術を利用できる環境整備やDXの推進等を通じ、新たな技術の出現やデジタル市場環境の変化に対応することが重要です。そのため、創作活動を支える環境の整備、DX推進、デジタル技術の利用環境整備、最先端スタジオ整備などが求められます。これらの取り組みを通じて、日本のコンテンツ産業の更なる発展を目指します。

今後の展望

今後、日本のエンタメ・クリエイティブ産業は、これらの課題を克服し、成長を遂げていくことが期待されます。そのためには、官民一体となった戦略的な取り組みが不可欠です。また、クリエイターの育成や労働環境の改善、海外展開の支援、デジタル技術の活用など、様々な側面からのアプローチが必要となります。具体的には、海外市場の獲得に向けて、市場調査やマーケティング戦略を強化し、各国のニーズに合わせたコンテンツを提供する必要があります。例えば、各国の文化や嗜好を考慮したローカライズ戦略や、現地のプラットフォームを活用した配信戦略などが考えられます。また、デジタル技術を積極的に活用し、コンテンツ制作の効率化や新たな表現方法の開発を進める必要があります。例えば、VR/AR技術を活用した没入感の高いコンテンツ制作や、AIを活用したインタラクティブなコンテンツ制作などが考えられます。さらに、クリエイターが安心して創作活動に専念できるような環境整備も重要です。例えば、フリーランスのクリエイターに対する社会保障制度の整備や、著作権保護のための法整備などが求められます。 経済産業省の資料によると、世界のコンテンツ市場は2027年までCAGR5%で成長すると予測されており、今後も市場規模の拡大が期待されます。また、海賊版被害額から推計すると、2033年の日本のコンテンツの海外売上ポテンシャルは、13兆円から20兆円に達すると見込まれます。PDF資料によると、2022年時点での海賊版被害額から推計される潜在的な海外売上は12兆円から16兆円であり、2033年には21兆円から28兆円にまで拡大すると予測されています。このポテンシャルを最大限に引き出すためには、政府と民間が連携し、戦略的な海外展開を推進する必要があります。具体的には、各国の市場特性を分析し、ターゲットに合わせたコンテンツを提供すること、海外のプラットフォームとの連携を強化すること、海外でのイベントやプロモーション活動を積極的に行うことなどが挙げられます。また、海賊版対策を強化し、正規版の流通を促進することも重要です。これらの取り組みを通じて、日本のコンテンツ産業が世界を魅了し、経済成長に貢献していくことが期待されます。 読者の皆様には、これらの情報を踏まえ、日本のエンタメ・クリエイティブ産業の未来を一緒に見守っていただきたいと思います。クリエイターの皆様がより良い環境で創作活動に励み、世界を感動させるコンテンツを生み出し続けることができるよう、一消費者として、また、業界関係者として、それぞれの立場で貢献していきましょう。そして、日本のエンタメ・クリエイティブ産業が、世界をリードする存在となるように、共に歩んでいきましょう。 Photo by Hahaha A on Unsplash

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