Audit Plus 高橋公認会計士事務所

2025/9/7

成長企業のためのエクイティ市場:資金調達の新たな道と実践的活用術

なぜ今、成長企業向けエクイティ市場が重要なのか

現在、多くの企業経営者が直面している大きな課題の一つは、成長段階における資金調達の難しさです。特に、スタートアップ段階を脱し、本格的な拡大を目指す成長企業は、財務実績が未成熟で担保も不足しているため、伝統的な銀行融資へのアクセスが限られる傾向にあります。こうした状況の中、OECDの最新報告書「Equity Markets for Growth Companies」が示すように、世界各国で成長企業向けの専用エクイティ市場が整備され、新たな資金調達の機会が広がっています。本記事では、この成長企業向けエクイティ市場の本質的な価値と具体的な活用方法、経営上の留意点について、実践的な視点から詳しく解説します。読了後には、自社の成長戦略にどのように応用できるか、具体的な行動につなげるための洞察が得られるでしょう。

核心を掴む!成長企業向けエクイティ市場の仕組みと真のメリット・デメリット

成長企業向けエクイティ市場は、主市場(メインマーケット)よりも上場要件が柔軟に設計された市場セグメントを指します。2023年末時点で、世界59の法域に存在し、16,247社もの企業が上場しています。特にアジアが活発で、全成長企業の半数以上がアジアに集中し、時価総額では世界の80%を占めています。中国だけでも2,000社以上の成長企業が上場し、時価総額は2.5兆ドルに達しています。

主なメリットとしては、第一に、上場要件の柔軟性が挙げられます。監査済み財務諸表の提出年数は成長市場では1~2年が一般的で、主市場の3年に比べて短く、歴史の浅い企業でも上場しやすくなっています。また、最低資本金や財務実績に関する要件も緩和されている場合が多く、例えば19の法域では主市場に財務実績要件があるのに対し、成長市場では11法域のみに留まります。第二に、資金調達機会の拡大です。2019年から2023年の間に、成長市場では4,221件のIPOが実施され、3,130億ドルの資金が調達されました。業種別ではテクノロジー、産業、ヘルスケアが中心で、イノベーション駆動型企業の受け皿となっています。

一方、デメリットや課題も存在します。流動性の低さが顕著で、戦略的个人投資家(創業者等)の保有比率が27%と高く、機関投資家の比率は18%と主市場(46%)よりも低い傾向にあります。また、成長企業に対するリサーチカバレッジが限られている点も課題で、調査対象法域の54%でリサーチが不足していると報告されています。加えて、上場コストが小規模企業にとって相対的に高くなる可能性もあります。例えば、時価総額1,000万ドルの企業の場合、スウェーデンや英国では初期上場費が時価総額の0.25~0.35%に達します。

これらの課題に対処するため、多くの法域では市場メイカー制度の導入やリサーチ補助などの対策を講じています。経営者としては、自社の成長段階や資金調達ニーズに合わせて、こうしたメリット・デメリットを慎重に衡量することが重要です。

専門家視点1:成長企業向け市場を活かす事業・実行戦略のポイント

成長企業向けエクイティ市場への上場を成功させるには、幾つかの重要なステップを踏む必要があります。第一に、適切な市場の選択です。自社の業種、規模、成長段階に合った市場を選定しましょう。例えば、テクノロジー企業が集中する市場や、業種別に特化した市場を検討することで、適切な評価を得られる可能性が高まります。第二に、上場準備の徹底です。成長市場では監査済み財務諸表の提出年数が短くて済む場合が多いですが、少なくとも1~2年分の整った財務資料を準備することが求められます。第三に、アドバイザーの選定と活用が不可欠です。19の法域で成長市場上場にアドバイザーの関与が義務付けられており、うち13法域では上場後も継続的な支援が必要です。アドバイザーは、上場プロセスの指導だけでなく、継続的なコーポレートガバナンスの維持にも寄与します。

目標設定については、KPIとして上場後の流動性指標(例:株価変動率、取引量)や時価総額成長率を設定し、定期的なモニタリングを行うことが推奨されます。社内体制としては、IR(投資家向け広報)機能の強化や、経営陣のコーポレートガバナンスに関する理解深化が必須です。外部連携については、証券会社や法律事務所、会計事務所との緊密な連携に加え、市場メイカーやリサーチ機関との関係構築も重要となります。特に、流動性向上のためには、上場前から潜在的な市場メイカーとの対話を開始することが有効です。

専門家視点2:成長企業向け市場への導入・活用のための財務・資金調達

成長市場への上場には、初期費用と継続費用の両面から資金計画を立てる必要があります。初期費用では、上場審査料、プロスペクタス作成費、アドバイザー費用などが主要項目です。相場としては、調達資金の2~8%程度が見込まれ、小規模なIPOでは比率が高くなる傾向にあります。継続費用では、年間上場維持費や開示書類作成費、監査費用などが発生します。多くの取引所では成長市場の費用を主市場より低く設定していますが、固定費要素があるため、時価総額が小さい企業では負担比率が高まる点に注意が必要です。

資金調達の選択肢としては、IPOに加え、上場後の二次募集(SPO)や私募も活用できます。OECD調査によると、全ての法域でSPOと私募が可能で、25法域では資金使途の開示が義務付けられています。費用対効果を検討する際は、上場による資金調達額だけでなく、知名度向上や取引先との信用力強化といった無形のメリットも評価に含めるべきです。会計・税務上の留意点としては、多くの成長市場でIFRSや国際会計基準に加え、地域の会計基準の使用が認められている点が挙げられます。また、シンガポールや日本などでは、上場費用の一部を補助する制度や税制優遇措置が設けられているため、こうした支援策の活用も検討すると良いでしょう。

専門家視点3:成長企業向け市場に伴うリスクとその管理術

成長市場への上場には、特有のリスクが伴います。第一に、流動性リスクです。取引量が少なく株価変動が大きいため、資金調達やEXITの際に予定通りに実行できない可能性があります。この対策として、市場メイカー制度を活用し、流動性を確保することが有効です。第二に、情報非対称性リスクです。成長企業は情報開示が不十分になりがちで、投資家の理解が得られない場合があります。定期的かつ透明性の高い開示を心がけ、必要に応じてIR活動を強化しましょう。第三に、コーポレートガバナンスリスクです。成長市場では取締役会の独立性や委員会設置に関する要件が緩和されている場合が多いですが、投資家からの信頼を得るためには自主的なガバナンス体制の整備が求められます。第四に、法規制リスクです。上場維持要件を満たせない場合、上場廃止となる可能性があるため、財務状況や free float(浮動株)比率などの継続的なモニタリングが不可欠です。これらのリスクに対しては、事前のシナリオ分析と対策の準備、関係機関との緊密な連携を通じて、総合的なリスク管理を実施することが重要です。

事例から学ぶ成功法則:成長企業向け市場を活かした企業の挑戦

実際の企業事例を通じて、成長市場の活用方法を探ってみましょう。仮想の事例ですが、実態に即した設定で紹介します。テック企業の「イノベート株式会社」は、AI技術を活用した業務効化ソリューションを提供する成長企業でした。同社は事業拡大のための資金調達を目指し、上場を検討しますが、主市場では財務実績要件を満たせない状況でした。そこで、成長市場である東京証券取引所のグロース市場への上場を選択します。

上場プロセスでは、認定アドバイザーの支援を受け、2年分の監査済み財務諸表を準備。プロスペクタス作成では、自社の技術の優位性と成長ポテンシャルを強調し、投資家にアピールしました。上場後は、四半期ごとの業績開示に加え、自主的にIR説明会を開催し、投資家との対話を重視します。しかし、上場から1年後、予想よりも株価の変動が大きく、流動性の低さに課題を感じます。対策として、証券会社と連携し、市場メイカーを導入。定期的な業績発表と将来展望の提示を続けた結果、機関投資家の関心を引き、上場3年後には時価総額を50%増加させることに成功しました。

この事例から学べる点は、成長市場への上場はあくまで通過点であり、上場後も継続的な投資家との対話と流動性対策が重要であることです。また、成長が実現した際には、主市場への移行も視野に入れ、長期的な成長戦略を描くことが求められます。

実行への第一歩:成長企業向け市場導入に向けた準備と専門家活用の判断基準

成長市場の活用を検討する際、まず明日からできる具体的なアクションとして、自社の財務状況と成長段階の評価から始めましょう。過去2~3年の財務実績を整理し、上場要件を満たすかどうかを確認します。同時に、業界内での位置付けや競合他社との差別化要因を明確にし、投資家にアピールできるストーリーを構築することが重要です。次のステップとして、潜在的なアドバイザーや証券会社との意見交換を開始し、自社に適した市場の選択や上場スケジュールについて相談すると良いでしょう。

しかし、自社だけで上場準備を進めるには、専門知識やリソースが不足している場合が多いものです。特に、法律や会計、金融に関する専門性が必要とされるため、外部専門家の活用を強くお勧めします。専門家を相談することで、上場プロセスの効率化、規制要件の正確な理解、投資家からの信頼獲得など、様々な面でメリットが得られます。また、経営全体への影響を考慮したアドバイスを得られるため、資金調達だけでなく、企業価値の持続的向上につなげることが可能です。専門家選定の際は、成長市場での実績や業界知識、コミュニケーションの取りやすさなどを総合的に評価し、自社と相性の良いパートナーを見つけることが肝要です。

未来を切り拓くために:成長企業向け市場で実現する企業の持続的成長

成長企業向けエクイティ市場は、単なる資金調達の手段ではなく、企業の持続的成長と競争力強化を支える重要な基盤です。適切に活用することで、リスク資本へのアクセス、企業の透明性向上、市場での認知度拡大など、多面的なメリットを得ることができます。しかし、成功のためには、上場後の流動性管理や投資家との継続的な対話、コーポレートガバナンスの強化など、不断の努力が求められます。まずは自社の現状を客観的に評価し、成長市場活用の可能性を探ることから始めてみてはいかがでしょうか。また、より詳細な自社への導入計画や、資金調達・戦策・リスク管理を含む経営全般への影響について、全体最適の視点からアドバイスできる専門家への相談も有効な手段です。もしご関心があれば、お気軽にお問い合わせください。

Photo by Xrdes on Unsplash

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