2025/1/28
コーポレートガバナンス強化で「稼ぐ力」を最大化する
はじめに
近年、日本企業の「稼ぐ力」の強化が喫緊の課題となっています。経済産業省が主催するコーポレートガバナンス研究会でも、この問題が重要なテーマとして取り上げられています。 グローバル競争が激化する中で、日本企業が持続的な成長を遂げるためには、単に形式的なコーポレートガバナンス(CG)の整備にとどまらず、実質的な企業価値向上につながる取り組みが不可欠です。 しかし、多くの企業では、CGコードのコンプライアンスが目的化し、自社にとって本当に必要なCGのあり方について十分に議論されていない現状があります。 また、モニタリング型の取締役会への移行が中途半端になり、監督と執行の役割分担が曖昧になっているケースも見られます。 このような状況が、資本市場からの成長期待を損ね、結果として企業価値の低迷を招いている可能性も指摘されています。 本記事では、経済産業省のコーポレートガバナンス研究会での議論を基に、日本企業が直面する課題を分析し、 「稼ぐ力」を強化するための具体的な取り組み方について考察します。 読者の皆様が、自社のCGをより実質的なものへと変革するためのヒントとなれば幸いです。
現状分析
コーポレートガバナンス研究会での議論によると、多くの企業がCGコードの形式的な整備には取り組んでいるものの、その実質的な運用には課題があることが浮き彫りになっています。 複数の委員から、形式的な整備が進んだ点は評価すべきであるという意見がある一方で、CGコードのコンプライアンスが目的化し、自社にとってCGはどうあるべきかという議論が十分に行われていないという指摘がありました。 具体的には、現場ではCGコードを遵守することが目的となっており、企業戦略と切り離された形でCGが捉えられている傾向があります。 ある企業関係者は、「CGは企業戦略の一部であり、事業戦略を展開するための枠組みである」と指摘しており、CGが企業戦略と深く結びついていることの重要性を強調しました。 また、モニタリング型の取締役会への移行が中途半端になっていることも、課題として挙げられています。 投資家からは、モニタリング型の取締役会への移行は評価できるものの、それが中途半端な状態になっているという声があり、監督と執行の役割分担が曖昧になっていることが問題視されています。 弁護士からは、監督と執行の分離だけでなく、両者の役割分担が重要であるという指摘があり、取締役会で大きな戦略や価値創造ストーリーの議論ができていない現状を改善する必要性が述べられています。 さらに、監督とは何をするものなのかという腹落ちが共有されていない部分を実質化するような考え方を示すことが重要であると指摘されています。 企業関係者からは、常識的な良い経営者であっても、大胆な意思決定をする仕組みに移行していくべき時期であるという意見がありました。 また、監督機能という言葉を、サポート機能あるいはステアリング機能というように呼び変えていく時期であるという指摘もありました。 学者からは、日本企業のPBR(株価純資産倍率)が低いのはPER(株価収益率)が原因であり、資本市場での長期の成長性に対する懸念や不確かさがあるという分析が示されています。 これらの意見は、日本企業のCG改革が、形式的な整備から脱却し、実質的な企業価値向上に貢献する段階に入っていることを示唆しています。 さらに、CGの取り組みと「稼ぐ力」の強化の関係についても議論が行われました。CGを企業価値向上につなげるためには、取締役会において十分かつ実質的な議論を行い、執行側が納得し行動変容まで起こさせることが重要であるという意見がありました。 また、経営の基本方針、強い経営チーム、強靭な取締役会の3軸で機能強化を図っていくことが「稼ぐ力」の強化につながるという意見も出ています。 その他、CEOの意識が重要であるといった意見や、稼ぐ力は経営者・執行側の問題であり、取締役会はそのための環境作りや後押しを行う役割であるといった意見もありました。 有識者からは、CG改革を企業価値につなげるためには、取締役会において十分かつ実質的な議論が行われることが必要であり、その議論を受けて、執行側が納得し、アクションを変えるところまで持っていくことが重要であるという指摘がありました。 また、経営の基本方針、強い経営チーム、強靭な取締役会の3軸で、順に機能強化を図っていくことが、CG改革が稼ぐ力の強化につながる企業になれるかどうかの分かれ目であるという意見もありました。 投資家からは、稼ぐ力やCGがしっかりしているかどうかはCEOの意識次第であるという意見があり、企業からは、稼ぐ力は広い意味ではCGの問題だが、取締役会の問題というよりは、経営者・執行側の問題であり、取締役会はそれを発揮出来る環境作りや後押しをする立ち位置であるという意見が述べられています。 本研究会において特に念頭に置く企業群についても議論が行われました。 日本企業全体の底上げの観点から広く対象を考えて議論すべきという意見もみられたものの、TOPIX500/JPX400や海外企業を競合とする企業等の日本企業をメインターゲットとして議論すべきという意見が多く挙がりました。 また、こうした企業群が先導することで、他の企業群においてもCGを競争戦略として生かすという潮流が生まれることが期待されるという意見もありました。 投資家からは、TOPIX500ぐらいの会社で、CGや経営の仕組みが高度化していき、それが他の会社にも、特にやる気のある会社に波及していくのが良い流れではないかという意見がありました。 弁護士からは、日本企業をリードしていく企業(具体的には時価総額1兆円以上)やそれを目指す企業を念頭に議論した方が、より高度な議論ができるのではないかという意見があり、CG改革への取組はコストがかかるので、全ての企業に求めるのは非効率であるという指摘がありました。 有識者からは、JPX400ぐらいの企業群をメインターゲットとして議論するのがよいという意見があり、そういった企業群がCG改革を生かして稼ぐ力を強化し、競争戦略を勝ち抜くことで、他の企業もCG改革を競争戦略として生かそうという潮流が生まれてくるのではないかという意見がありました。 また、海外企業を競合とするようなグローバル展開をする企業を、まずはターゲットとするのがよいという意見があり、必要性を強く感じており、改革を進めるための体力が十分にある。 リーダー群の企業に先に取組を行ってもらい、時間差でほかの企業にも影響を及ぼすというのが、効果的なやり方であるという意見がありました。 一方で、弁護士からは、対象を絞りすぎると、稼ぐ力の積み増しという意味合いが薄くなってしまうのではないかという意見があり、せめてプライム市場くらいで議論してもよいのではないかという意見も出ています。 企業からは、広く対象を考えて議論をしても良いのではないかという意見があり、既に海外展開をしている会社に絞ると、経済全体、日本の企業全体の底上げにはつながらないのではないかという指摘がありました。
課題への取り組み方
コーポレートガバナンス研究会での議論を踏まえ、具体的な課題への取り組み方について考察します。まず、CGの取り組みの方向性として、価値創造ストーリーにCGをフォーカスさせる必要性が指摘されました。 企業関係者からは、価値創造ストーリーがあって初めて、個別の政策や経営がそれに沿っているかどうかを判断できるが、それができていない、あるいは腹落ちするような内容になっていない会社が非常に多いという意見があり、まずは価値創造ストーリーは何かということにフォーカスさせるようなCG改革を行う必要があるという意見が述べられました。 また、守りのガバナンスの議論が多くなりがちなので、意識的に攻めのガバナンスにウェイトを移すという議論を取締役会ですることに賛成するという意見がありました。 有識者からは、経営の健全性と競争戦略の両輪を実現してグローバルで勝ち抜くためには、日本企業の取締役会を、モニタリング型に振り切って、間接民主型のガバナンスを目指していくことで、経営の意思決定の質とスピードを上げ、開示や対話をより充実させて、株主、投資家を含む社会からの信頼を獲得していくことが必要であるという意見がありました。 投資家からは、モニタリング型にシフトしていくかわりに、執行にはどんどん権限を与えるべきであり、権限を与えるが、何かあったときにはその分大きな責任を負うといったモデルにシフトしていくということが重要であるという意見が述べられています。 次に、CGの在り方/監督と執行の在り方については、取締役会で議論すべきであるという意見や、自社のコーポレートガバナンスガイドラインを軸に取締役会の在り方や機能を決めるべきといった意見、価値創造ストーリーを議論する場としての監督と執行の役割分担が重要であるという意見がありました。 また、監督という言葉の解釈についての誤解があるといった意見や、社外取締役は社長と同じ問題意識で議論できる人が理想であるという意見がありました。 企業からは、CGの在り方について、取締役会で議論すべきであるという意見があり、投資家からは、自社のコーポレートガバナンスガイドラインが重要であり、それを軸として、取締役会の在り方や機能を決めるべきであるという意見がありました。 弁護士からは、執行と監督の分離だけでなく両者の役割分担が重要なイシューであり、SX、GX、DX、人的資本、それらの価値創造ストーリーをきちんと議論する場としての監督と執行の役割分担が重要であるという意見がありました。 学者からは、監督という言葉の解釈について誤解があるのではないかという意見があり、細かいことに社外取締役がタッチすることに対する執行側の懸念が、監督の徹底は守りのガバナンス、すなわちリスクへの関心の集中やブレーキ役という勘違いを生んだのではないかという指摘がありました。 また、社外取締役によるグッドクエスチョンは大事であると同時に、クエスチョンだけでは企業価値向上に結びつかないケースもあるため、社外取締役から何らかの提案やアドバイスがあってもよいのではないかという意見がありました。 さらに、企業からは、どういう人が社外取締役の仕事をできるのかというと、社長の悩みを自分事として本当に悩める方であり、社長と同じ問題意識で議論ができる方が理想形であり、どういった方がどういうマインドで仕事をするべきなのか、気持ちの入った議論をしていただきたいという意見がありました。 取締役会の体制に関しては、スキルマトリックスのテンプレート化に対する懸念や、社外取締役のサクセッションプランの強化の必要性を指摘する意見がありました。 また、取締役会のアジェンダに関し、稼ぐ力や企業価値向上につながる内容となっていないという指摘や、決議事項としなくても良いものについて議論を深めても良いのではないかといった意見がありました。 企業からは、スキルマトリックスがテンプレート化しているという指摘があり、各社が、取締役会として本当に必要なスキルは何なのかということを明確に議論して、開示する必要があるという意見がありました。 有識者からは、社外取締役のサクセッションプランの強化が必要であるという意見がありました。 学者からは、取締役会の実効性に関し、アジェンダ設定が、稼ぐ力や企業価値向上につながる内容(DX、GX、無形資産、人的資本等)となっていないという側面があるという指摘があり、社外取締役の目線を入れるべきだと思うが、この点、取締役会議長に社外取締役を起用している会社はまだまだ少ないという意見がありました。 弁護士からは、決議事項として挙げなくて良いものが何なのかについても、もう少し議論を深めても良いのではないかという意見がありました。 取締役会の実効性評価においては、社外取締役を含む取締役個人の評価が必要であるとの意見がありました。 指名委員会においては、全委員を社外取締役にすることの懸念や、取締役会との情報共有の課題を指摘する意見がありました。 また、CEOの任期制に対する問題点や、再任・不再任の議論の必要性を指摘する意見がありました。 有識者からは、社外取締役のサクセッションプランの強化の観点から、実効性評価において、社外取締役も含む取締役個人の評価をすることが必要であるという意見があり、社外取締役が、就任後に十分貢献しているかについて評価する仕組みを導入し、社外取締役にその意識を十分持ってもらうことで、より議論に参加し、実力を発揮してもらうことができるのではないかという意見がありました。 学者からは、指名委員の全員が社外取締役というケースも出てきているが、その場合に果たしてどれだけリアリスティックで深い議論ができるかという指摘がありました。 企業からは、指名委員会における課題は、指名委員会と取締役会における情報の共有であるという意見がありました。 学者からは、CEOの選解任について、任期制を敷いている企業が多いが、果たして長期にわたる構造改革やそれによる稼ぐ力の向上につなげられるかは問題があるという意見があり、指名委員会でCEOのパフォーマンスの分析評価を行っていない。それでは、CEOの再任・解任の議論にはつながりにくいと思うという意見がありました。 業務執行に関しては、経営会議等の実効性向上の必要性や、執行側の体制づくりの必要性についての意見がありました。 また、取締役会のインフラとして、取締役会事務局の強化が必要であるとの意見がありました。 学者からは、社内の経営会議等(執行側)の実効性評価も大事であるという意見があり、いくら取締役会の実効性を高めても、その前提として経営会議等の実効性が高くならないと、取締役会だけ稼ぐ力を高めることは難しいという意見がありました。 弁護士からは、従業員の人的資本だけでなく、CEOを含めた経営人材についても人的資本改革を考えるべきであるという意見があり、執行側の体制の在り方というCxOチーム、経営チームの組成も研究会の議論に組み込んでいくべきであるという意見がありました。 有識者からは、取締役会のインフラとして、取締役会事務局の強化も必要になるのではないかという意見があり、事務局はいろいろな課題を抱えている。人数や質の強化が重要だと思う。 また、会社の中の位置づけとして、ほかの部署と兼任していることもあるが、取締役会の重要性が高まるにつれ、事務局の負担も責任も増えるので、専任部署の設置が必要と考えるという意見がありました。 本研究会の成果物に関しては、ひな形のようなものではなく、企業が自社のCGの在り方を自分たちで考えることを促すようなものにすべきといった意見や、それに加えて多くの事例情報を含む多様な選択肢を示すようなものにすべきとの意見がありました。 また、社外取締役に対して不作為のリスクについて喧伝すべきという意見や、政策保有株式の縮減に関して保有される側の会社の姿勢について議論してもよいのではないかといった意見がありました。 企業からは、丁寧に取組についてひな形を出しすぎると、日本企業はそれを行うことが目的となってしまうことは過去の経験から明らかであるという意見があり、いくつかの項目は出したとしても、自分たちで考えることを促すような改革の方向とするのが良いという意見がありました。 また、この研究会のアウトプットは、新たにコンプライする基準が増えるようなものにはならないようにする必要があるという意見があり、企業が自社のCGの在り方を議論するきっかけになる、あるいはそのときに参考になるような多くの事例情報も含む、多様な選択肢を示すようなものになると、多くの企業にとって非常に参考になるのではないかという意見がありました。 弁護士からは、このような研究会だとガイドを作ることも多いと思うが、あまり先に行くと企業はついてこられないし、あまり歩みが遅いと意味がないので、現状を考えながら議論したいという意見がありました。 また、日本企業は何もしないリスクに鈍感なので、何もしないと周回遅れになるということを、社外取締役は経営陣に伝え、創意工夫をさせるのが仕事であるということも、もっと喧伝してもよいのではないかという意見がありました。 企業からは、政策保有株の縮減については、かなり岩盤に来ていると思うという意見があり、ここから先は、保有されている側の会社の意識にかかっている。株式を売却すれば取引を縮小する等をほのめかす会社も多い。保有される側の会社の姿勢というのも、今回、少し議論してもよいのではないかという意見がありました。 経営トップへの意識付けも重要であり、経営トップが腹落ちしないとCGが実質化しない一方で、CGと企業価値や株価との関連性が見えにくいことを指摘する意見がありました。 また、ベストプラクティスを示すことで、それを参考にしながらCGを経営戦略として活かそうとするCEOが生まれてくるのではないかといった意見や、CGの仕組みのビジョンを作るのがCEOと社外取締役のどちらであるか不明確といった意見がありました。 弁護士からは、経営トップが腹落ちしないとCG改革は進まないが、腹落ちしづらい理由の一つが、CG改革により企業価値や株価が上がるのかが見えないことであるという意見があり、個社を挙げてというのは難しいのかもしれないが、個社の取組の中で、株価や企業価値が上がったというのが分かりやすい形でお示しいただけると、経営トップも腹落ちしやすいのではないかという意見がありました。 有識者からは、ベストプラクティスを参考にしながら、CGを経営戦略として活かそうとするCEOが生まれてくるのではないかという意見がありました。 投資家からは、CGの仕組みのビジョンを作るのがCEOと取締役会議長のどちらなのかというのは不明確であるという意見があり、海外だと取締役会議長を社外取締役が担うことが多いと思うので、長期的にはそういう世界観を目指すべきであるが、会社の実態や歴史、ビジネスモデルを深く理解するといったこととのバランスをどうとるかという意見がありました。 その他、多くの機関投資家が投資対象としているインデックスにおける投資対象企業の多さや、機関投資家の形式的な議決権行使の問題について指摘する意見がありました。 投資家からは、多くの投資家がTOPIXをターゲットにしているという意見があり、これを何とか見直したいという意見がありました。 弁護士からは、企業としては、監督側に良い人に来て欲しいが、独立性基準といった消極要件のために、積極要件としての有能さを犠牲にしていることもあるという意見があり、機関投資家の形式的な議決権行使の問題は、改めて問題提起すべきであるという意見がありました。
今後の展望
今後の検討内容として、価値創造経営の推進が重要となります。ROE(自己資本利益率)・PBR(株価純資産倍率)といった指標向上は引き続き重要である一方、持続的な企業価値向上のためには、中長期目線での攻めの成長投資(成長領域への設備投資・研究開発投資・人材投資等の戦略的アロケーション)が重要となります。 経営者による中長期目線での攻めの経営(事業ポートフォリオの最適化と成長領域への経営資源集中(成長投資))が求められます。 今後も企業による前向きな投資を引き出すためには、成長投資に対する政府支援(補助金・税制等)と、経営者の投資判断を株主等から後押しするための環境整備(企業経営・資本市場一体改革)が必要です。 特に、攻めの成長投資に向けた「企業経営・資本市場一体改革」として、経営が成長投資に踏み切れる企業側の経営変革を促すことと、経営に対して成長投資を促す資本市場からの働きかけを強めることが重要です。 コーポレートガバナンスは、取り組むべき経営変革の一つです。 持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向け、経営者が中長期目線での攻めの成長投資を継続的に行っていくためには、その基盤となるCGの実効性を確保することが重要です。 日本企業のCGはかなり整備が進んだものの、CGコードのコンプライが目的化する等、事実上、CGの取組がコンプライアンス業務の一環として行われ、形式的な体制の整備にとどまっている企業も多いものとみられます。 次の段階として、CGの取組を、経営者が迅速・果断な意思決定を行い、中長期目線での攻めの経営(事業PFの最適化と成長投資)を実行し、グローバルな市場で売れるモノ・サービスを作るための環境づくり、すなわち「稼ぐ力」の強化に向けたCGの実現に軸足を移していく必要があります。 その観点からは、企業は、単にCGコードをコンプライするのではなく、自社に最適なCGの実現に向け、CGの在り方を自ら議論し、取締役会とCEO・経営陣の役割分担を明確化した上で、それぞれの役割に応じた実効的なCG体制・仕組みを構築していくことが重要と考えられます。 また、外部環境が複雑化する中、企業が「稼ぐ力」を強化していくためには、投資家との建設的な対話を通じて価値創造ストーリーを磨き上げ、投資家を含む社会からの信頼を獲得し、価値創造ストーリーを実現していくことが求められます。 企業のこうした取組を促進するため、主に企業経営者をターゲットとしてガイダンスを策定し、以下の内容を示してはどうか。 自発的な取組を促進するCGの考え方の整理(中長期目線での攻めの経営に向け、上場企業としてのメリットを活かして資本市場の力を活用することの意義とCGの取組の必要性等)等 CGの取組の進め方や、「稼ぐ力」を強化する上で、特に重要となるCG体制・仕組み(その検討ポイント、取組モデル、企業事例を含む)等 具体的な体制・仕組みの案としては、取締役会においては、取締役会がその役割を果たす上で、最適な取締役会議長と取締役を選び、合理性や効率性の観点から各種委員会を設置して委員長・委員を選ぶとともに、以下の仕組みを構築する必要があります。 CEO・経営陣の経営判断の軸であり、かつ監督の前提となる企業戦略等の大きな方向性を決めることに注力できる「取締役会アジェンダ」の設定、そうした企業戦略等の大きな方向性を実行し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上へとつなげていくことのできるCEOを選ぶための「CEOの後継者計画」の策定、CEO・経営陣の迅速・果断な意思決定を可能とするための「権限委譲」、CEO・経営陣のリスクテイクを後押しするための「報酬政策」の策定、経営陣の責任者であるCEOの執行の結果を評価・検証するための「CEO再任・不再任(CEO評価)」の仕組みの整備、こうした仕組み全体の実効性を確認し、改善するための「取締役会の実効性評価」の設計、実効的な体制を持続的に確保するための「ボードサクセッション」の整備等が必要です。 CEO・経営陣においては、取締役会が示した企業戦略等の大きな方向性に基づき、リーダーシップを発揮し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、以下の体制・仕組みを構築する必要があります。 迅速・果断な経営を行うための「役員体制(CxO等)」、「経営会議」の整備、強い経営チームを維持・改善する「幹部候補人材の選抜・育成」の仕組みの構築等が必要です。 本研究会では、企業の価値創造ストーリーの実現に向けて、その基盤となる取締役会/経営陣の体制・仕組みや、価値創造ストーリーの構築・実行に向けたプロセス及び結果の評価・検証の仕組みに関する議論に加え、企業活動の基盤である会社法に課題がある場合は、その改正に向けた議論を行うものとしています。 価値創造ストーリーの構築・実行の流れとして、成長投資を通じた持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的とし、企業が価値創造ストーリーの構築を行い、長期戦略/実行戦略等を策定します。 その上で、取締役会/経営陣の体制・仕組み(CG)を整備し、価値創造ストーリーを実行(事業PFの最適化と成長領域への経営資源集中)し、評価・検証を行います。 また、投資家とのエンゲージメントを通じて、説明、協創、信任、議決権行使、結果の還元、議決権行使を行います。 本研究会におけるCGに関する議論概要としては、日本企業における「稼ぐ力」の強化に向けたCGの取組の促進に向け、①CEO・経営陣の自発的なCGの取組の促進に関する議論や、各企業が自社に最適なCGを実現するための②CGの取組の進め方、③「稼ぐ力」を強化する上で、特に重要となるCG体制・仕組み(その検討ポイント、取組モデル、企業事例を含む)についての議論を行うこととしています。 テーマとしては、CEO・経営陣の自発的なCGの取組の促進と、自社に最適なCGの実現に向けた支援があり、自社に最適なCGの実現に向けた支援については、CGの取組の進め方と、「稼ぐ力」を強化する上で、特に重要となるCG体制・仕組みについて議論が想定されています。 議論概要としては、企業の成長に向けた資本市場の活用の意義とCGの取組の必要性、CGに関する「稼ぐ力」の強化に向けた捉え方の理解の促進に向けた方策、実効的なCG体制・仕組みの構築方法、各社におけるCGの在り方、「稼ぐ力」を強化する上で、特に重要となるCG体制・仕組み、その検討ポイントと取組モデル(企業の事例も参考に議論予定)(※取組モデルについては、いわゆるモニタリングモデルを念頭におくことを想定)といった内容が想定されています。 ガイダンスの項目(想定案)としては、現時点では、前頁の議論と事例調査の結果を踏まえ、以下の通り取りまとめることを想定しています。 背景、「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス(※企業の成長に向けた資本市場の活用の意義とCGの取組の必要性、「稼ぐ力」の強化に向けたCGの捉え方)、コーポレートガバナンスの取組の進め方、検討ポイントと取組モデル(①自社におけるコーポレートガバナンスの在り方、②コーポレートガバナンス体制・仕組み、- 企業の取組事例一覧)を想定しています。 本研究会では、第1回研究会の議論を踏まえ、日本企業をリードしていくべき企業群として、TOPIX500(※)を念頭に、「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスに関する議論を行うこととしています。 しかし、本来的には、「稼ぐ力」の強化に向けた経営基盤としてのCGの整備に向けた取組は、TOPIX500のみならず、全ての企業に求められていることとしています。 TOPIX500を含む日本企業をリードする企業の取組が、その他の企業においても、自社におけるCGの在り方を見直すきっかけとなり、自社の状況やリソース等も踏まえながら、「稼ぐ力」を強化するために各社において自社に最適なCGを実現していく潮流が生まれることが期待されます。 CGの取組の在り方としては、CGは、会社が、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みであり、単にCGコードの各原則についてコンプライやエクスプレインをすれば良いというものではなく、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が求められています。 「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みです。 「コーポレートガバナンス・コード」とは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものです。 「コーポレートガバナンス・コード」の目的としては、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することを目指しています。 CGを意識した経営を行い、企業価値の向上につなげている企業も存在します。 日本取締役協会「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2023」受賞企業の例として、荏原製作所と味の素が挙げられます。 荏原製作所は、コーポレート・ガバナンスを進化させ、具体的な成果につなげていく「Governance to Value」を目指しており、これは、その中核を担う取締役会が、自らのパフォーマンス向上に真摯に向き合っていく覚悟を表したものです。 社会に、そしてステークホルダーに求められる企業グループであり続けるため、絶えずガバナンス改革を進めています。 味の素グループは、コーポレート・ガバナンスを、ASV経営を強化し、2030年のありたい姿を実現するための重要な経営基盤の一つと位置づけており、さらにASV経営の実効性を高めるため、「ステークホルダーの意見を反映させる適切な執行の監督」と「スピード感のある業務執行」を両立し、監督と執行が明確に分離している会社機関設計の指名委員会等設置会社を選択しています。 本格的にCGに取り組むきっかけとしては、企業の事例として、業績の不透明感の高まりや、創業者によるCGの必要性の認識、大規模なコーポレートアクション等をきっかけに、本格的にCGに取り組むケースがみられました。 また、日本企業においては巨額赤字等の経営危機に瀕した際に、本格的にCGに取り組むケースがみられますが、そういった環境に陥っていなくてもCGに本格的に取り組んでいる企業もあります。 企業の成長に向けた資本市場の活用の意義とCGの取組の必要性としては、企業が、持続的に成長していくためには、複雑化する外部環境を成長機会と捉え、自社ならではの価値創造ストーリーを構築し、実行していくことが求められています。 価値創造ストーリーは、企業が単独で構築するのではなく、投資家をはじめとしたインベストメントチェーンに関わる多様なプレイヤーとの対話をもとに、協働して磨き上げていくことが重要であり、それにより、以下の効果が期待されます。 ①自社の競争優位を生み出す価値創造ストーリーの構築が可能となる、②投資家をはじめとするステークホルダーからの信任を得ることができる、③投資家との間で成長の時間軸が共有される。 この際、CGが実効的に機能することで、資本市場からの声について、客観性を持ちつつ、社内での議論に反映することが可能となるとともに、資本市場に対し、その議論を踏まえた価値創造ストーリーや、その実現可能性について、説得力を持った説明が可能となります。 その結果、企業は、中長期目線での攻めの経営(事業PFの最適化と成長投資)が可能となります。 価値創造ストーリーとCGについて、CGは、価値創造ストーリーの策定やその実現の基盤であり、長期戦略や実行戦略の策定・推進・検証を着実に行い、長期的かつ持続的に企業価値を高める方向に企業を規律付ける仕組み・機能であるとされています。 価値創造ストーリーにおけるCGの位置付けとしては、価値観、長期戦略(長期ビジョン/ビジネスモデル/リスクと機会)、実行戦略(中期経営戦略など)、成果と重要な成果指標(KPI)、ガバナンスという構成になっています。 ポイントとしては、「ガバナンス」は、長期戦略や実行戦略の策定・推進・検証を着実に行い、長期的かつ持続的に企業価値を高める方向に企業を規律付ける仕組み・機能であること、企業には、長期戦略等の企業行動を規律するガバナンスの仕組みを、実効的かつ持続可能なものとなるように整備することが求められるとされています。 CGに関する理解の促進に向けた方策として、CEO・経営者による、「稼ぐ力」の強化に向けたCGの取組の自発的な取組の促進に向け、よくあるCGの捉え方(例)と対比させる形で、「稼ぐ力」の強化に向けたCGの捉え方を示すことが考えられます。 よくあるCGの捉え方(例)としては、CG全般については、コンプライアンス業務(CGコードをコンプライすればよい)、監督と執行の関係については、経営者の裁量を奪うもの、取締役が(執行の)出世のゴール、対立関係/上下関係、監督の意味については、執行にブレーキをかけたり、不祥事を発見すること、経営陣に代わって執行の細部まで直接マネジメントを行うこと、CEOの選任については、社内者が関与することなく、独立社外取締役のみでCEOを選任という捉え方があります。 一方、「稼ぐ力」の強化に向けたCGの捉え方としては、CG全般については、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための経営基盤、監督と執行の関係については、意思決定過程の合理性を確保しつつ、経営者に裁量と責任を与えるもの、取締役と経営陣は役割分担(兼務する場合もある)、適度な緊張と信頼関係の下で持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をともに実現する関係、監督の意味については、執行の適切なリスクテイクや社内の経営改革の後押し、不作為のリスクを提起すること、経営陣が策定し、取締役会が決定した経営の基本方針や戦略に照らして、指名・報酬の決定を通じた経営の是非の判断やパフォーマンスの評価を行うこと等、CEOの選任については、取締役会・指名委員会や独立社外取締役と執行が協力してCEOを選任という捉え方があります。 自社に最適なCGの実現に向けた取組として、「稼ぐ力」の強化に向けてCGの実効性を確保するためには、監督と執行が車の両輪としてバランス良く機能することが重要です。 取締役会は自社に最適なCG実現に向け、足下のCGの状況に捉われずに、「稼ぐ力」の強化の観点から自社におけるCGの在り方(経営スピードの向上、リスクテイクの促進等)について十分に議論し、経営陣も含めて認識を共有することが必要となります。 その上で、自社におけるCGの在り方を基に、取締役会とCEO・経営陣それぞれが、役割に応じた実効的なCG体制・仕組みを構築していくことが必要です。 取締役会の役割に応じたCG(例)としては、監督機能を重視する場合、取締役会は独立社外取締役中心の構成とした上で、アジェンダの見直しを行い、大胆に執行へ権限委譲することが自然であり、その際、権限委譲を受ける執行も、その機能強化を行うことが必要となります。 取締役会の役割に応じたCG(例)として、意思決定機能重視、伝統的な取締役会(マネジメントボード)では、議長は社内の業務執行取締役、体制は社内の事業に精通している業務執行取締役が中心、アジェンダは業務執行の決定が中心、権限委 Photo by Kano Takahashi on Unsplash
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