Audit Plus 高橋公認会計士事務所
令和8年施行「企業価値担保権」とは?不動産・個人保証に頼らない新時代の資金調達

2026/1/22

令和8年施行「企業価値担保権」とは?不動産・個人保証に頼らない新時代の資金調達

⚡ Executive Summary(30秒でわかる要点)

  • 【着眼】 従来の不動産や個人保証に依存した融資から脱却し、ノウハウ、顧客基盤、将来キャッシュフローといった「目に見えない総財産」を担保とする新制度が令和8年1月より本格始動します。
  • 【勝機】 金融機関は単なる資金供給者から、事業成長を支援する「伴走者」へと役割を変容させます。経営者は自社の無形資産を正しく言語化することで、かつてない投資余力を手にすることが可能です。
  • 【一手】 実行時(有事)においても「事業の解体」ではなく「事業の継続・承継」が法律上の原則(法第157条)となります。今こそ、自社の企業価値を「一体の財産」として再定義する戦略的対話が必要です。

「担保がないから投資できない」という言い訳が通用しなくなる時代

多くの経営者が、画期的な新規事業やDX投資を志しながらも、不動産担保の不足や個人保証のリスクを前に足踏みをしてきました。しかし、令和8年1月から施行される「企業価値担保権」は、この構造を根本から破壊します。もはや金融機関が見るのは、貴社の登記簿謄本ではなく、貴社が生み出す「将来の付加価値」そのものです。これは、経営者の志と事業のポテンシャルが、直接的に「資本」へと変換される時代の幕開けを意味しています。

経営視点で読み解く「一体としての総財産」という革命

この制度の核心は、担保の対象を「個別資産の寄せ集め」から「一体としての総財産」へと昇華させた点にあります。これには、貸借対照表(B/S)には表れない「のれん」や「ノウハウ」、さらには「契約上の地位」までが含まれます。経営者にとって、自社の強みを「キャッシュフローを生み出す仕組み」としてパッケージ化し、それを担保にレバレッジをかけるという、極めて高度な財務戦略が可能になるのです。

事業戦略視点:金融機関を「最強の参謀」に変容させる

企業価値担保権の設定は、単なる借入ではありません。それは金融機関との「運命共同体」としての契約です。ガイドラインでは、金融機関に対して「顧客企業の事業拡大や経営改善に向けた自助努力を最大限支援すること」を求めています。つまり、ROI(投資対効果)を最大化させるためのコンサルティング機能を、融資の付帯サービスとして引き出すことができるのです。経営者は、金融機関を「金利の交渉相手」ではなく、「企業価値向上のためのパートナー」として再定義すべきです。

財務・リスク視点:有事における「事業解体」のリスクヘッジ

経営者にとって最大の恐怖は、万が一の際に手塩にかけて育てた事業がバラバラに切り売りされることでしょう。新制度では、担保権の実行は「事業を解体せず雇用を維持しつつ承継すること」が原則(法第157条第1項)とされています。個別資産の売却は、事業譲渡が困難な場合の「例外」に過ぎません。この法的枠組みは、債務者である貴社にとって、究極の事業継続計画(BCP)として機能します。従業員の雇用と取引先との関係を守り抜くことが、法律によって担保されているのです。

事例から学ぶ成功法則:無形資産を「資本」に変えた挑戦者の視座

ある成長途上の製造業では、独自の精密加工技術(ノウハウ)と強固な顧客ネットワークを持っていましたが、工場は賃貸であり、従来の融資枠では次世代設備への投資が困難でした。しかし、この「企業価値」を一体として評価するスキームを先取りすることで、将来の収益力を裏付けとした大規模な資金調達に成功しました。ポイントは、経営者が「自社の技術が、今後5年でどれだけのキャッシュフローを生むか」を、金融機関が納得するレベルで精緻にシミュレーションし、対話を重ねたことにあります。この制度は、自社の価値を信じる経営者にこそ、最強の武器を与えてくれるのです。

経営者の「志」を、企業の「持続的価値」へ昇華させるために

令和8年の施行に向け、今から準備すべきは「自社の真の価値」を見つめ直すことです。不動産価格の変動に一喜一憂する時代は終わりました。これからは、貴社が社会に提供する付加価値、磨き上げたノウハウ、そして共に歩む従業員との信頼関係こそが、最大の財務的裏付けとなります。このパラダイムシフトを好機と捉え、攻めの財務戦略を構築できるかどうかが、次代の勝者を分ける分水嶺となるでしょう。

今回ご紹介した内容は全体像の一部に過ぎません。貴社の固有の状況に合わせて、この企業価値担保権を最大限に活用し、企業価値向上に繋げるための具体的なロードマップについては、ぜひ一度ご相談ください。

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