Audit Plus 高橋公認会計士事務所
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2026/1/23

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⚡ Executive Summary(30秒でわかる要点)

  • 【着眼】 生成AIの導入は「検討」フェーズを終え、金融機関の約8割が試行・利用に踏み出す「実装」の時代へ突入しました。
  • 【勝機】 2030年代半ばに向けた「耐量子計算機暗号(PQC)」への移行や、AIガバナンスの構築は、単なるリスク管理ではなく、企業の持続的な信頼性とROIを担保する戦略的投資です。
  • 【一手】 経営トップ自らが「3つの防衛線」に基づくガバナンス体制を主導し、技術の進展に合わせた不断のロードマップ更新を意思決定の柱に据えるべきです。

停滞する日本経済を打破する「生産性向上」のラストリゾート

1990年代以降、日本の労働生産性は主要国と比較して伸び悩みが顕著です。この閉塞感を打破する鍵は、資本ストックの量以上に「技術をいかに使いこなすか」という一点に集約されます。現在、生成AIが生産性に与える影響は年率0.05%から1%を超えるという予測まで幅がありますが、この差を生むのは技術そのものではなく、経営者の「実装の巧拙」です。AIを単なる「自動化(労働力の代替)」として捉えるか、あるいは「支援(人間の能力拡張)」として組織に組み込むか。この意思決定が、今後10年の企業価値を決定づけます。

AI実装を「コスト」から「企業価値向上」へ翻訳する

AIの導入形態は、汎用ツールの利用から独自モデルの開発まで多岐にわたりますが、経営者が注視すべきは「自社の競争優位性がどのレイヤーにあるか」を見極めることです。単なる効率化なら汎用型で十分ですが、顧客体験の核心に触れる部分はカスタマイズや新規開発が必要となります。その際、ブラックボックス問題やハルシネーション(もっともらしい嘘)といった技術的リスクを「経営上の不確実性」として許容し、管理する覚悟が求められます。

「8割の実装率」が突きつける、ガバナンスという名の競争戦略

最新の調査では、金融機関の約3割が既に生成AIを利用し、試行・検討中を含めるとその割合は約80%に達しています。もはや「やるかやらないか」の議論は過去のものです。今、経営者が直視すべきは、AIが生成した不正確な情報によって顧客に損害を与えた際の「私法上の責任」です。契約書に性能保証をどう盛り込むか、あるいはベンダとの責任分担をどう明確化するか。これらは法務の仕事ではなく、企業のキャッシュフローを守るための高度な経営判断です。

2039年の危機を見据えた「暗号資産」の防衛線

デジタル化の進展は、同時にサイバーリスクの激変を意味します。特に、現在主流の暗号技術(RSA等)が量子コンピュータによって解読されるリスクは、決して遠い未来の話ではありません。有識者の約6割が2039年までに、約9割が2044年までにそのリスクが顕在化すると予測しています。2030年代半ばには優先度の高いシステムから「耐量子計算機暗号(PQC)」への移行を完了させる必要があり、この「負の遺産」を作らないための投資判断は、今この瞬間から始まっています。

組織を動かす「3つの防衛線」:AIガバナンスの成功法則

AIの暴走を防ぎ、その恩恵を最大化するためには、組織構造そのものをアップデートしなければなりません。具体的には、現場(第1線)でのリスク所有、リスク管理部門(第2線)による牽制、そして内部監査(第3線)による独立した監視という「3つの防衛線」をAI管理に適用することです。これは単なる管理体制の強化ではありません。経営トップが「AIの不具合は起こり得る」という前提に立ち、それでもなおイノベーションを推進するという強いコミットメントを示すための「信頼のインフラ」なのです。

不確実性を「勝ち筋」に変える、経営者の覚悟

AIや量子技術といった破壊的イノベーションは、予測不可能なリスクを伴います。しかし、リスクをゼロにすることに固執して実装を遅らせることは、日本経済が経験してきた「機会損失」という名の最大のリスクを再生産するだけです。今、参謀として提言したいのは、技術の正しさを追求するだけでなく、「社会に受け入れられる道筋」を経営の意思として描くことです。

今回ご紹介した内容は全体像の一部に過ぎません。貴社の固有の状況に合わせて、このAI・セキュリティ戦略を最大限に活用し、企業価値向上に繋げるための具体的なロードマップについては、ぜひ一度ご相談ください。

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